新人が離職してしまう背景には、「根性がない」「向いていない」といった一言では片づけられない、さまざまな事情や心の揺れがあります。
だからこそ、指導にあたる中堅職員やベテラン職員には、“なぜ辞めたのか”を責めるのではなく、“どうすれば続けられたのか”を考える視点が求められています。
日々の声かけや関わり方、ちょっとした空気感──
それらを振り返ることは、結果として新人だけでなく、職場全体にとってのやさしさにもつながっていくはずです。
この記事では、新人が離れる場面に隠れている「気づきのヒント」を一緒に探っていきます。
“辞めた理由”を責めるより理解したい
新人が辞めてしまう理由を「やる気がない」「根性が足りない」といった一言で片づけてしまうと、
いつまで経っても、職場の課題は見えないままかもしれません。
むしろ、“責める空気”が強まることで、
職場の雰囲気が固まり、次の離職を生む――そんな悪循環さえ生まれてしまうこともあります。
ここでは、新人が離れる背景を「理解しようとする姿勢」で見つめなおし、
組織として“次につながる関わり方”を考えていきます。
新人が辞める背景に目を向ける
新人の離職には、個人の問題だけでなく、
職場環境・コミュニケーション不足・指導体制の不整備など、さまざまな要素が絡んでいることがあります。
“辞めた理由”を聞くことは、組織の未来のヒントになるかもしれません。
- 離職の背景をヒアリングし、感情をはさまず客観的に整理する
- 社内アンケートや面談を通じて、職場の課題を「見える化」する
- 性格や能力だけで判断せず、多角的に状況を検証する
- 責める言葉ではなく、改善志向のコミュニケーションを心がける
- リーダー層が率先して課題を共有し、安心感をつくる空気を広げていく
一人の離職の背景には、
「気づこうとしなければ見えない小さなサイン」が隠れていることもあります。
まずは、「辞めた」ことを責めるのではなく、
「なぜ辞めたのか」を自分たちの言葉で受け止めてみるところから、変化が始まるかもしれません。
新人の離職が続く現場で思うこと
新人の離職が続く現場では、
「また辞められた…」と、リーダーや先輩自身もフラストレーションを感じてしまうことがあります。
ですが、その感情のままで立ち止まってしまうと、
同じことを繰り返してしまいかねません。

「なぜ、うちの職場では離職が続いてしまうのか?」
一歩引いた視点で現場を見直すことが、次に活かせる“学び”につながります。
日々の業務に追われていると、新人とじっくり向き合う時間はどうしても不足しがち。
けれど、小さなコミュニケーションの積み重ねこそが、離職予防のカギになるのです。
- 離職した方の声を記録し、上司や人事と共有する
- 離職パターンを分析して、共通点や傾向を探す
- 先輩からのフィードバックを新人一人ひとりに合わせて調整する
- 上長による定期的なフォローアップ面談を実施する
- チーム全体でフォロー体制を見直し、負担を分散
大切なのは、
「一人の力で抱え込まず、みんなで支える仕組み」を、
“いま”の現場に合わせて育てていくことです。
「甘え」と片づけたくない気持ち



「最近の若者は根性が足りない」
「もう少し我慢できないのかな」
現場では、ついそんな言葉が飛び交うこともあります。
でも、“甘え”の一言で片づけてしまうのは、本当にもったいないこと。
新人の声に耳を傾けてみると、
実は「職場の環境」や「指導方法」に、見落としがちな課題が潜んでいることがほとんどです。
確かに、新しい世代と現場の“やり方”にはジェネレーションギャップもあります。
けれど、それを理由に距離を置くのではなく、
組織として少しだけ柔軟に工夫を重ねていくことで、
若い世代が本来持つ力を伸ばすチャンスになるはずです。
若い世代の力を引き出すためにできること
- 新人の意見を否定せず、ずは“受け止める”姿勢を大切にする
- 仕事内容や目標を具体的に伝え、成果を「見える化」する
- 勤務環境(残業・休暇など)への不安を事前に解消する
- メンター制度や相談窓口をわかりやすく整備する
- 定期的な匿名アンケートで、実際の声や困りごとを把握する
「自分たちのやり方」に固執するのではなく、
“どんな工夫なら新人が安心して働けるか”――
そんな視点で、現場の仕組みや空気感も
少しずつ見直していきたいですね。
何が足りなかったのかを振り返る
離職という結果を、「本人の性格」や「向き・不向き」だけで片づけてしまうのは、とてももったいないことです。
本当は、「なぜ続けられなかったのか?」を組織の視点からも見直すことが、
次の人材育成や職場づくりのヒントになります。
そのヒントは、実は――
“離職した新人の体験談”や、“アンケートで集めた本音”の中にこそ、たくさん隠れているのです。
- 離職者アンケートを定期的に実施・分析し、職場全体で共有する
- 退職面談で出た声を各部署や人事と連携して対策に活かす
- 反省点や気づきを部署の枠をこえて報告し、改善策をマニュアル化する
- 新しい施策の成果はKPIなどで数値化し、PDCAサイクルで見直す
- 社内勉強会やワークショップで、成功も失敗もオープンに共有する
離職は“責めるための材料”ではなく、
「これからの働き方を見直す、組織の成長のきっかけ」にできるはず。
小さな振り返りの積み重ねが、
明日の現場をちょっとずつ優しく変えていく――
そんな未来を、一緒につくっていきましょう。
関わり方・声のかけ方を再考する
最後に、新人との日々のコミュニケーションを“振り返る時間”も、とても大切です。
ほんの少しの声かけや、さりげないフィードバックが、
「ここにいても大丈夫なんだ」と感じる安心感や信頼感につながることがあります。
- 会話の頻度やタイミングを見直し、「ちょっとした日常のやりとり」を増やす
- 具体的な行動をポジティブに言及して、自己肯定感を育てる
- 指摘をするときは、「何がどう問題か」「どう改善するか」をわかりやすく伝える
- メンターや先輩同士でロールプレイをして、声かけのトーンをそろえる
- 新人が報告しやすい雰囲気づくりとして、オンラインチャットや専用チャンネルを活用する
新人との信頼は、
「特別なイベント」よりも、日々の小さなコミュニケーションの積み重ねから。
忙しい毎日だからこそ、
“ひとこと多く声をかける”ことから始めてみませんか。
教える側が抱える不安もある
新人指導にあたる先輩やリーダーも、
実はたくさんの不安や戸惑いを抱えているものです。
業務知識やマネジメント経験が十分でないまま「教える側」になり、
どう関わればいいのか悩む…そんな声は、決して少なくありません。
離職が続けば、「自分のやり方が悪いのでは」と
自分を責めてしまい、指導へのモチベーションも下がりがちです。
- 教え方や教材の準備に時間がとれず、焦ってしまう
- 知識不足やマネジメントの未経験で、新人からの信頼を失う不安
- 離職が自分の評価に直結してしまうプレッシャー
- 新人の期待に応えられず、無力感を感じること
- 指導側同士で成功・失敗体験を共有する機会の不足
こうした気持ちは、誰もが感じる“自然な揺れ”です。
不安や負担を自分ひとりで抱え込まず、
組織で「こんな悩みもあったよ」と共有し合うことで、
少しずつ、教える側の心も軽くなります。
先輩同士でロールプレイを重ねたり、
定期的なOJT研修の場を設けたり――
“教える人”を支える工夫も、現場全体のやさしさにつながっていきます。


次につながる見直しの視点
離職が続く現場では、どうしても毎日の忙しさに追われて、
「何か変えなきゃ」と思いながらも、改善策が後回しになりがちです。
でも、「仕方ない」と嘆くだけで終わらせず、
“次にできる一歩”を考えてみることが大切です。
現状を客観的に整理し、
無理なく“小さな改善”を積み重ねていく――
それだけでも、職場の雰囲気や働きやすさは着実に変わっていきます。
- 定量・定性データの収集
離職率・面談内容・アンケート結果などを、定期的に見直してみる - 小さな仮説検証
改善案を少人数で試し、成果を短期間で振り返る - フィードバックループ
新人→先輩、先輩→リーダー…と意見を循環させる - 横断的なワークショップ
部署を超えて課題を共有し、みんなでアイデアを出し合う - 成果の見える化
KPIやグラフで改善効果を社内に公開し、みんなのモチベーションにつなげる
小さな一歩でも、
成功体験を重ねていくことで、組織の「変化する力」が磨かれていきます。
離職防止はもちろん、
明日からの現場がちょっとだけ働きやすくなる――
そんな“日々の積み重ね”を、これからも大事にしていきたいですね。
“正しさ”より“やさしさ”を
指導の現場では、「正しいやり方」を伝えることに意識が向きがちですが、
いちばん大切なのは――まず相手の立場に立って、やさしさで関わることです。
新人さんは「期待に応えたい」と思う反面、
ミスを恐れて質問しづらい…そんな気持ちを抱えやすいもの。
その壁を取り除くには、完璧さよりも“温かなサポート”が欠かせません。
- ミスを指摘する前に、「気づいてくれてありがとう」とまず声をかける
- 技術や知識を伝えるときも、思いやりの言葉を必ず添える
- 「分からないことは何でも聞いてね」と繰り返しリマインド
- スモールステップで学べるマニュアルや動画を用意
- ポジティブなフィードバックを日常的に伝え、安心感をつくる
やさしさがベースにあると、
新人さんは安心して質問や挑戦ができるようになり、
結果的にスキルの定着も、チーム全体の成長も、どんどん加速していきます。
失敗から学べる職場づくりへ
失敗をタブーにせず、“学びの資源”としてみんなで活かせる職場は、
自然と雰囲気が明るくなり、改善のサイクルも回りやすくなります。
ミスを責めるのではなく、「どうしたら次に活かせるか」をみんなで考えられる仕組みがあれば、
新人さんだけでなく、誰もが安心して働ける環境が整っていきます。
- 定期的な「失敗共有会」を開き、誰もが経験を語れる場をつくる
- 共有された事例を全員でブレストし、原因や対策を一緒に考える
- 出た改善策はドキュメント化して、いつでも見られるナレッジ庫を整える
- 失敗を報告した社員には、ポジティブな評価や称賛ポイントを贈る
- トライ&エラーを奨励し、小さな実験も許容する文化を広げる
こうして失敗から得た知見を日常にフィードバックすることで、
職場の“安全感”や“働きがい”もどんどん高まっていきます。
前向きな職場づくりは、
新人の安心だけでなく、長く働き続けられる現場にもつながります。
まとめ|次代へつなぐやさしい職場づくり
新人の離職を“甘え”や“怠慢”で片づけず、
教える側もまた悩みや不安を抱えながら、毎日現場と向き合っている――
そんな現実にやさしく寄り添うことが、支援の第一歩です。
失敗を責めるのではなく、学びに変える仕組みを育てていく。
「正しさ」だけでなく、相手の気持ちや背景にも目を向ける体制を整える。
その積み重ねが、
職場を“風通しのいい場所”へと変え、
次の世代の成長を、やさしく確かなものにしていきます。
大丈夫。今日の一歩が、きっと未来の誰かの働きやすさにつながります。



みんなで少しずつ、やさしい現場をつくっていきましょう。
よくある質問(Q&A)
- Q1. 新人がすぐ辞めてしまうと、どうしても自分の指導に自信がなくなります…
-
A1.それは誰でも感じることです。まずは“あなたが悩んでいること”自体が、現場や新人のことを本気で考えている証です。完璧な指導者はいません。小さな声かけや振り返りの積み重ねが、大きな変化につながります。
- Q2. 離職率を下げるために、いま現場ですぐできることは何ですか?
-
A2.「一人で抱え込まない」ことが最初の一歩です。声かけや面談、ミーティングで“気になるサイン”を共有しましょう。まずは「困った時は言ってもいいんだよ」と安心できる雰囲気づくりから始めてみてください。
- Q3. 新人とのコミュニケーションで大切なことは?
-
A3.正しいやり方を伝えることも大切ですが、いちばん大切なのは“やさしい気持ち”で寄り添うことです。ミスや戸惑いを否定せず、何度でも質問していいよ、と伝えることで、信頼関係が深まります。
- Q4. 失敗が怖くて新人にチャレンジさせられません…
-
A4.失敗は“学びのきっかけ”です。みんなでシェアし、次に活かす文化を育てることで、新人も先輩も安心してチャレンジできるようになります。失敗談をオープンに語れる職場は、自然と雰囲気も明るくなりますよ。
- Q5. 職場改善や離職防止策が続かず、効果が見えません…
-
A5.すぐに大きな変化は現れなくても、小さな改善や声かけの積み重ねが、必ず“風通しのよさ”を育てていきます。焦らずに、一歩ずつ。一緒にできることから始めていきましょう。
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このブログを書いている「まきこむ」と申します。
介護支援専門員(ケアマネジャー)として働きながら、趣味で創作活動も楽しんでいます。
介護にまつわる悩みや、日々の気づき、そして「やさしい未来を一緒に歩むためのヒント」を、このブログにそっと詰め込んでいます。
読んでくださった方の心が、少しでも軽くなるように。そんな思いを込めて、言葉を紡いでいます。
どうぞ、ゆっくりと遊びにきてくださいね。


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