ナースコールのブザー音が鳴るたびに、心臓がドキリと跳ねる――
それは、誰もが一度は経験する新人時代の戸惑いです。
夜勤や初任務、慣れない現場のなかで

「どう対応すればいいのかわからない…」
そんな気持ちを抱えているあなたに、
まず伝えたいのは「その不安は自然なものです」ということ。
本記事では、マニュアルには載っていない
“実際の現場で役立つ対応”を、3つの視点からご紹介します。
大切なのは、特別な知識ではなく、
今日からできる“やさしい行動”を少しずつ積み重ねること。
- 利用者の安心感を引き出す声かけ
- 自分の焦りを整えるための簡単な工夫
- 仲間と連携するための一言メモ
そんな「神対応」のヒントを、やさしく、具体的にお届けします。
あなたの一歩が、ご利用者の笑顔につながりますように。
1. 「少しお待ちくださいね」の一言で安心感を伝える
ナースコールが鳴る瞬間、ご利用者の心には不安が広がります。
特に夜間や、周囲に誰もいないと感じる状況では――



「大丈夫かな」
「すぐ来てもらえるかな」
そんな思いでボタンを押しているのです。
だからこそ、最初の“ひと言”がとても大切です。
その言葉が、心の緊張をほどくカギになるからです。
たとえば、
「少しお待ちくださいね」――この短い言葉には、実は大きな効果があります。
- 声かけのタイミングをつくる
ブザー音に驚いたご利用者に、“今すぐ気にかけていますよ”と伝えられます。 - 心を落ち着かせる時間を生む
あなたが向かっている間、ご利用者は「来てくれている」と安心できます。 - 状況確認の姿勢を示す
“慌てず正確に状況を見ています”という意思を、自然と伝えられます。
【実践ヒント】
夜勤帯にコールの音が聞こえたら、 深呼吸ひとつ。
そして、まずは「少しお待ちくださいね」と声をかけてください。
廊下を小走りに移動しながら、
その言葉をもう一度、やわらかく、ご利用者に向けて届ける。
それだけで、場の空気が和らぎ、
ご利用者との信頼も静かに深まっていきます。
2. わからないときは“連携”が神対応になる
介護の現場では、覚えることが山ほどあります。
疾患の知識、ケア手順、急変時の対応…。
特に新人のうちは、ナースコールで伝えられた内容に



「どう答えたらいいのか分からない…」
胸がぎゅっと苦しくなる瞬間もあるかもしれません。
そんなとき、覚えておきたい“神対応”があります。
それは、「ひとりで抱え込まない」こと。
――現場は、チームで支え合う場所だからです。
- 無理に答えようとしない
ご利用者には「すぐにお答えできず申し訳ありません」と丁寧に断りを入れましょう。焦って誤った情報を伝えるよりも、“確認します”のひと言が信頼をつなぎます。 - すぐに先輩に相談する
端末や無線で状況を簡潔に報告します。ナースコールの内容、ご利用者の表情や様子、緊急度を伝えるとスムーズです。 - アドバイスを受けたら、速やかに行動に移す
「〇〇を確認しました。こう対応しますね」と落ち着いた声で伝えることで、ご利用者も安心しやすくなります。
【実際のエピソード】
ある新人職員が「トイレに行きたい」と言われた際、
どう移乗すべきか迷い、夜勤リーダーに連絡をしました。
先輩の指示で防水シートを先に敷き、落ち着いて対応したところ、
ご利用者も安心して待ってくださり、事故なく介助を終えることができました。
頼れることは、力になる。
相談する姿勢は、“安心の連携”の第一歩なのです。
3. ご利用者の表情や声のトーンをよく観察する
ナースコール対応で大切なのは、
“言葉のやり取り”だけではありません。
本当に求められている支援にたどり着くためには、
五感を使った情報収集が欠かせません。
表情や声のトーン、ちょっとした仕草。
そのひとつひとつが、ご利用者の「サイン」になっています。
- 顔色の変化
青ざめていたり、額に汗がにじんでいるときは、体調不良の可能性が高いサイン。 - 目線や瞳の焦点
うつろな視線や目が合わない様子があれば、意識レベルの変化が隠れているかもしれません。 - 声の大きさや速さ
小さな声や早口は、痛み・呼吸の乱れ・不安の表れです。声の質感にも耳を澄ませてみましょう。 - 呼吸のリズム
呼吸が浅い、荒い、間隔が不規則──そんなときはバイタルチェックや看護師への報告を視野にいれましょう。
観察のコツ
- 無線や受話器越しでも、声のテンポやトーンに敏感になる
- 部屋に到着したら、まず視線を合わせ、表情に目を向ける
- ご利用者の視線の先にある危険(段差・手すり・ベッド柵)にも注意を払う
ナースコールは、「体の声」でもあり「心の声」でもある。
五感で感じ取りながら、必要な支援にたどりつける力を育てていきましょう。
ナースコール対応で困ったときに大切な視点
ナースコールが重なったり、
ご利用者の要望にうまく応えられなかったとき。



「ちゃんとやらなきゃ」
「完璧にしなきゃ」
このように自分を責めてしまうことはありませんか?
でも、現場で本当に求められているのは
“寄り添う姿勢”です。
- まずは「何をしたら安心するか」を優先
症状を聞き出すより先に、「大丈夫ですよ」と声をかける。共感の一言が、ご利用者にとっていちばんのケアになることもあります。 - 「わからない」を口にできる強さ
一人で抱え込まず、「この判断で合っているか不安です」とチームに相談することが、次の解決策を生み出します。 - 一歩引いて俯瞰する
目の前の対応に集中しすぎて全体が見えなくなると、他のご利用者のニーズに気づきにくくなることも。時々、フロア全体を見渡してみましょう。
完璧じゃなくていい。
“迷いながらも寄り添っているあなたの姿”こそが、
ご利用者にとって、何よりの安心になるのです。
「焦らなくていい」新人期こそ、自分のペースで育つ力を
はじめての夜勤やナースコール対応――
すべてが新鮮で、戸惑いの連続。



「早く一人前にならなきゃ」
と肩に力が入っていませんか?
でも、介護の現場は“正解がひとつじゃない”場所。
だからこそ、あなた自身のペースで成長していくことが
何よりも大切なのです。
- 小さな目標を設定
例:「1日1回は先輩に質問する」
数字で区切ることで、達成感が生まれやすくなります。 - 振り返りノートで気づきを記録
「できたこと」「うまくいかなかったこと」を具体的に書き出してみましょう。書くことで、自分の成長が見えるようになります。 - ロールプレイ・eラーニングの活用
実際の対応を想定した練習や、すき間時間の動画学習も有効です。少しずつでも継続すれば、自信がじわじわ育っていきます。
焦らず、一歩ずつ。
“自分の歩幅”で成長していくあなたを、
きっと現場の誰かが見守っています。
まとめ|“神対応”とは、やさしさを持ち帰ること
本記事で紹介した「声かけ」「連携」「観察力」は、すべて
“やさしさ”を具体的な行動に変えるヒントでした。
夜勤やナースコール対応で大切なのは、
完璧な受け答えではなく、寄り添う姿勢です。
- 自分の心を整えてから、相手に向き合う
落ち着いた声は、ご利用者の不安をやわらげます。 - 「わからない」は、信頼につながる言葉
相談する勇気が、チームケアをより強くします。 - 小さな変化を見逃さない観察力
表情や声のトーンが、隠れたサインを教えてくれます。 - 焦らず、自分のペースで育つこと
積み重ねた気づきが、確かな自信になります。
“神対応”とは、
特別な知識をひけらかすことではありません。
あなたの優しい声かけ、丁寧な観察、誠実な姿勢こそが、
ご利用者の安心と笑顔をつくる、何よりの答えです。
今日も、あなたのその一歩が
現場にあたたかな灯りをともしていることを、忘れないでください。
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このブログを書いている「まきこむ」と申します。
介護支援専門員(ケアマネジャー)として働きながら、趣味で創作活動も楽しんでいます。
介護にまつわる悩みや、日々の気づき、そして「やさしい未来を一緒に歩むためのヒント」を、このブログにそっと詰め込んでいます。
読んでくださった方の心が、少しでも軽くなるように。そんな思いを込めて、言葉を紡いでいます。
どうぞ、ゆっくりと遊びにきてくださいね。


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