“また反省ばかり…”が止まらない夜に
― 自分を責めすぎる中堅介護職のあなたへ ―
介護の現場で、一日の終わりに誰よりも遅く残り、
ふと、「あのとき、もっと早く気づけていれば…」と自分を責めてしまう。
そんな“ひとり反省会”が、気づけば日課のようになってはいませんか?
ミスや判断の遅れに気づくたびに、
過去の場面を何度も思い出し、「あれは最善だったのか」と繰り返す。
けれど、その振り返りが“成長の糧”ではなく、
“自分を否定する時間”になってしまうとしたら――
それは、あなたのやさしさが疲れているサインかもしれません。
真面目な人ほど、自分に厳しくなってしまうものです。
本記事では、「反省」ではなく「見直し」という視点から、
心の重さを少しでも軽くするヒントをそっとお届けします。
“ひとり反省会”が止まらない日
介護の現場では、一日の業務を終えたあと、
ふと立ち止まって“ひとり反省会”を開いてしまう――
そんな中堅職員の方は、実は少なくありません。
特に、ご利用者のケアで

「うまくできなかった」
「判断が遅れたかもしれない」
と感じたとき。
その小さな不安が、夜になって大きな後悔へとふくらみ、
眠れないほど思考が止まらなくなってしまうことも。
それは、“責任感”の裏返し。
でも、いつしか振り返りは“自己否定のループ”となり、
心をすり減らしていきます。
まじめで、真剣に向き合っている人ほど、
この境界線を見失いやすいのです。
- 夕方以降、心の中で“今日の失敗”を探しはじめる
- 「私のせいかも」と責任をひとりで抱え込んでしまう
- スマホやメモ帳に反省点をメモし、何度も見返す
- 就寝前まで考えが止まらず、眠りが浅くなる
- 翌朝、疲れが取れず、気持ちの切り替えができない
「もっとよくできたかも」と思う心は、
ケアに向き合っている証です。
でも、“責める時間”が長すぎると、やさしささえも消耗してしまうのです。
あのとき、もっとできたかもしれない…



「あのとき、もう少し声をかけていれば」
「あと数分、早く対応できていたら…」
そんな思いが、ずっと胸の奥に残ってしまう日があります。
介護の仕事は、“その瞬間の判断”に重みがのしかかる場面の連続です。
ご利用者の変化を見逃さないように。
ご家族の気持ちにも応えられるように。
だからこそ、小さな選択のひとつひとつに、
「命の重さ」を感じてしまうのでしょう。
でも――
振り返りは、自分を責めるための時間ではありません。
それは、次に活かすための“ヒントを見つける時間”です
- 声かけのタイミングや言葉の選び方を、ふとしたときにメモにしておく
- 重度の方の移乗の動線や姿勢を動画で見直し、チームで共有
- 緊急時の対応マニュアルを、現場目線で書き足しカスタマイズ
- 先輩や同僚に相談し、他の視点からの気づきを取り入れる
- **週ごとに「振り返りシート」**を記録し、次の一歩の目印にする
「もっとこうできたかもしれない」
その気持ちは、後悔ではなく、ケアに真剣だった証です。
大切なのは、“その気づきをどう活かすか”。
過去を責めるのではなく、明日へのやさしい改善に変えていきましょう。
自分を責め続けてしまうあなたへ
介護の現場で働く人の中には、
ほんの少しの判断ミスや対応の遅れを、
“自分のせい”として心に抱え続けてしまう方がいます。



「もっと気づけたらよかった」
「自分が至らなかったせいかもしれない」
そんな思いを繰り返していると、
心と体がじわじわと疲れてしまうのも無理はありません。
自分を責めるクセが、心身に与える影響
まじめで責任感が強い方ほど、
“完璧であろう”とする気持ちが強くなり、
つい自分に厳しくなりすぎてしまいます。
でも、その習慣が続くと、
ストレスホルモンが過剰に分泌され、
心身の調子まで崩してしまうことがあるのです。
特に、常に判断が求められる介護の現場では、
“自分を追い詰める思考のループ”に陥りやすいとも言われています。
以下のような小さな実践から、心の癖を少しずつ変えていけます
- ミスを「経験値」ととらえ、「次に活かせる力」として記録してみる
- 思考がまとまらない日は、深呼吸やマインドフルネスで一度立ち止まる
- 同僚や上司に“相談”ではなく“共有”をして、気持ちを軽くする
- 感謝ノートや「今日のよかったことリスト」を3行だけつけてみる
- 感情が高ぶったときは、ストレッチや温かい飲み物で“自分を落ち着かせる”
“自分へのやさしさ”は、特別なことではありません。
それは、明日も安心してケアに向き合うための準備なのです。
「反省」と「振り返り」は、ちがうもの
介護の現場で、よく口にする「反省」と「振り返り」。
でも、このふたつは似ているようで、まったく違うプロセスです。
反省は、自分の行動を「良かった・悪かった」と評価すること。
ときに、自分を責める方向へと傾きがちです。
一方で、振り返りは、事実を客観的に見つめて、
これからのケアに活かす“ヒント”を見つける行動です。
だからこそ、介護の現場では「反省」よりも「振り返り」の習慣が大切なのです。
- ケアの内容を客観的に見直し、より質の高い支援につながる
- 感情に流されず、冷静な視点から改善策が見えてくる
- 経験をチームで共有し、現場の“知恵”として積み重ねられる
- 自分の視点だけにとらわれず、新しい気づきや視点が広がる
- 自然とPDCA(※)が回り、ムリのない働き方ができるように
※PDCAとは:「計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Action)」のサイクルのこと。
反省は「自分を責める時間」にもなりかねません。
でも、振り返りは「自分を育てる時間」です。
今日を振り返ることは、明日のケアを少しだけやさしくする準備。
無理のないペースで、心をほぐしながら続けていきましょう。
建設的に受け止めるには?
自分のミスや判断に、つい厳しくなってしまう日があります。



「なんであんなことしたんだろう」
「ちゃんとやったはずなのに…」
そんなふうに気持ちが揺れるのは、
まじめに、誰かのことを考えて動いていた証拠。
でも、感情にふたをして抑え込むよりも、
いったん認めてあげることが、
次の一歩をやさしく後押ししてくれます。
- 事実と感情を分けて書き出す
→「何が起きたか」と「どう感じたか」を別々に。視界がクリアになります。 - 改善点は3つまで
→やることが多すぎると、また落ち込みやすくなります。焦らず、ひとつずつ。 - 1on1で言葉にしてみる
→上司や先輩との対話で、思わぬ安心感に出会えることも。 - “肯定の言葉”を味方につける
→「今日の頑張りは、明日につながってる」。心の中で何度でも唱えてください。 - “できたこと”も一緒に振り返る
→反省点だけじゃなく、小さな達成や工夫にも目を向けて。
振り返ることは、
自分に厳しくなるためじゃありません。



「ちゃんと考えて動いたね」
「次はこうしてみようか」
そうやって、心の中で静かにエールを送ること。
前を向くための“ひと休み”が、
明日を変える力になるのです。
「次につながるか」の視点
反省がつらくなるのは、
「自分を責めること」で終わってしまうからかもしれません。
でも本当は、反省とは──
未来にやさしくバトンを渡すための時間です。
たとえば、こんなふうに考えてみてください。
- 「何が起きたか」「なぜそうなったか」を整理する
→ 感情を少し横に置いて、出来事を“物語”として振り返ってみましょう。 - 改善点は、欲張らず1〜3個まで
→ たくさん直そうとすると、気持ちが追いつかなくなります。 - チームで共有し、視点を広げる
→ 自分だけの視点から、みんなの知恵へ。視界が変わってきます。 - 小さな「うまくいったこと」も一緒に記録
→ 成功もちゃんと拾い上げることで、自分を認めるきっかけに。 - 月に1回、振り返りミーティングを
→ 誰かと一緒に見直すことで、「一人じゃない」が実感できます。
過ちに目を向けるだけじゃなく、
「この経験を、次の安心にどうつなげるか」
という視点を持つと、
反省は“自分を育てる時間”に変わっていきます。
自分が歩んだその一歩は、
きっとこれから誰かの安心につながっていく。
だからこそ、どうかその振り返りを
未来の自分への贈り物にしてあげてください。
自分にも、やさしくなれるように
ご利用者の言葉にならない想いをくみとり、
ご家族の不安にそっと寄り添う──
そんな毎日を過ごしているあなたへ。
他人にはやさしくできるのに、
どうして自分には、つい厳しくなってしまうんでしょう。
もしかすると、
その「やさしさ」は、ちゃんと自分にも向けていいものかもしれません。
- 「いまの自分」を否定しない
→ 感情を飲み込まず、「そう感じて当然だった」とそっと認めてみる。 - 自分にも声をかける
→ 「だいじょうぶ」「成長してるよ」と、誰かに言いたい言葉を、自分にも。 - 月に一度、成功を見つける時間を
→ できたこと・やれたことを書き出して、「よくやった」と記録しておこう。 - 呼吸を整えるルーチンをつくる
→ ストレッチ・深呼吸・マインドフルネス…短くても“余白”を持つだけで、違ってくる。 - 誰かと気持ちをシェアする
→ 同僚と「最近どう?」を話すだけでも、胸のつかえがふっと軽くなる。
“自分にやさしくする”って、
わがままでも、なまけでも、甘えでもありません。
それは「もっと、続けていくための力」を育てること。
自分を追い詰めていたぶんだけ、
その手でそっと、自分を包んであげる。
今日もがんばったあなたに──



「おつかれさま。ちゃんと、ここまで来られたね」
そう声をかけてあげてください。
他人にかけるその言葉を、自分にも届けてあげて
「よく頑張ったね」
「次は、もっとラクにできるよ」
──そんなふうに、あなたは誰かをやさしく励ましてきた。
でも、それを自分に向けることには
どうしてこんなにもためらいがあるんだろう。
介護の現場で日々奮闘するあなたは、
他人の努力にはすぐに気づけるのに、
自分の頑張りには鈍感になっていないだろうか。
- 「ありがとう」
今日もひとつ、やり遂げたことに。「ありがとう、自分」と感謝していい。 - 「がんばったね」
小さな努力を見つけて、振り返りメモに書いてあげよう。自分の存在を見逃さないために。 - 「大丈夫」
不安が押し寄せたら、紙にひとこと。「私は大丈夫」。それだけでも、心は整う。 - 「一歩ずつ」
大きな目標に疲れた日は、目の前の一歩だけでいい。それを進めた自分を、ちゃんと褒めよう。 - 「変わってきたよね」
1週間前の自分と、少し違う。変化の種を見つけて、3つだけ書き出してみる。
他の誰かにかけている“やさしい言葉”は、
自分にもかけていい。
それだけで、不思議と心に余白ができて、
笑顔で「また明日もやってみよう」と思える。
この習慣が、チームにも伝わって、
現場にあたたかな循環が広がっていきますように。
「反省」じゃなくて、「見直す」でいい
今日の出来事を振り返るとき、
「反省しなきゃ」という声が、
まるで義務のように頭の中で響くことがある。
でも、“反省”という言葉には、
つい自分を責めすぎてしまう響きがある。
だから、そんなときは――
「見直す」と言いかえてみる。
たったそれだけで、心の重さが少し和らいで、
未来を見据える視点に切り替わることがあります。
- 呼び方を変える
「反省会」ではなく「見直しミーティング」。
目的は“責める”ことじゃなく、“気づきと解決”を見つけること。 - フレームで整理する
5W1Hや魚骨図などを使って、問題を感情でなく“構造”で見てみる。 - 良かった点にも光を当てる
ミスだけじゃなく、スムーズだった対応や工夫にも拍手を。
バランスを取ることが、心を守る秘訣。 - 行動につながるメモにする
「何をどうするか」を明確に。
誰が・いつまでに・どんなふうに――を書いておく。 - 振り返りの習慣をつくる
“見直す→やってみる→また見直す”の流れを自然に回すことで、
改善は無理なく、続けられるものになる。
「見直す」ことは、自分に優しくなれる成長の時間。
それは、ケアの質にも、チームの関係にも、
じわじわといい影響を広げていきます。
まとめ|自分にもやさしく、次へつなげる
「反省」と「振り返り」は、
似ているようで、実はまったく違うもの。
“反省”は、ときに心をきゅっと締めつける。
一方、“振り返り”は、未来へつながる地図を描く時間。
みなさんが、
日々、仲間やご利用者にかけている
やさしい言葉を、今度は自分自身にも向けてほしいのです。
「よくやったね」
「今日はここまでで十分だよ」
「次はもっと楽にできるかもしれないね」
そんな声を、自分にかけてみてください。
ひと息つくこと。
立ち止まって見直すこと。
そして、“責める”のではなく“育てる”ように、
心と向き合うこと。
それは、仕事にも、自分にも、やさしいケアのかたちです。
週末1分の“やさしい見直し”チェックリスト
□ 今週、できたことにチェックをつけてみましょう
- ご利用者に「ありがとう」と言われた瞬間を覚えている
- 小さな声かけで笑顔を引き出せた場面があった
- 苦手な業務に一歩でも挑戦した
- チームの誰かをサポートできた
- 自分の感情に気づき、無理をしすぎずに調整できた
- ミスを振り返り、「次こうしよう」と書き出した
- 同僚や上司と気軽に話せた
- 自分を責めるより、やさしく言葉をかけられた
- 深呼吸・ストレッチなどでリセットできた
- 帰り道や休日、「ちょっとだけ気が楽かも」と感じた
1つでも ✅ がついたら、それは「進んでいる証」
できた数よりも、「気づけたこと」そのものがあなたの力。
書き出して見直すだけで、自己否定のループから一歩離れることができます。
よくある質問(Q&A)
Q1. 「反省」と「振り返り」はどう違うのですか?
A1. 「反省」は自分の行動を善悪で判断し、自己批判に陥りやすい思考です。一方で「振り返り」は事実を客観的に整理し、改善点や学びを見つける前向きな行動です。介護現場では、反省ではなく振り返りを習慣化することで、継続的な成長につながります。
Q2. 自分を責めないためにはどうすればいい?
A2. 「セルフコンパッション(自己への思いやり)」が鍵です。たとえば、「あの時の私は、その時できる最善を尽くした」と自分に声をかけることで、否定的なループを断ち切ることができます。簡単な深呼吸やストレッチも有効です。
Q3. ミスをしたとき、チームに迷惑をかけてしまったと感じます。
A3. チームで働くということは、誰かの失敗も、誰かの支えで補えるということです。あなたも誰かを支えています。ミスは共有し、次に活かすためのプロセスとして受け止めましょう。
Q4. 振り返りが習慣になりません。続けるコツは?
A4. 「完璧にやろう」と思わず、週に1回・3分でいいので「できたことに○をつけるだけ」のチェックリストから始めましょう。続けるうちに、自然と前向きな内省が習慣化されます。
Q5. 自分に優しくするって、甘やかしではないですか?
A5. いいえ。自分に優しくすることは、ケアの質を守るための“自己管理”です。他者にかける「大丈夫」「ありがとう」の言葉を、自分にも返すこと。それが、次の一歩を踏み出す力になります。
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このブログを書いている「まきこむ」と申します。
介護支援専門員(ケアマネジャー)として働きながら、趣味で創作活動も楽しんでいます。
介護にまつわる悩みや、日々の気づき、そして「やさしい未来を一緒に歩むためのヒント」を、このブログにそっと詰め込んでいます。
読んでくださった方の心が、少しでも軽くなるように。そんな思いを込めて、言葉を紡いでいます。
どうぞ、ゆっくりと遊びにきてくださいね。


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